アメリカ「包括的金融安定化策」。
2月10日(日本時間11日深夜)発表直後。
NY株式市場サアッと下落に向かいましたよ。
外国為替も連動して一気に外貨が売られ、円高へ一直線。
ドルもユーロも対円で下降。
安全通貨「円」への避難が加速。
ドル/円91円後半から90円まで約2円。
ユーロ/円など約120円から116円まで、5円もの下落幅。
市場の「包括的金融安定化策」への期待が大き過ぎた。
そもそも「発表日」が延期されただけで「売り材料」なのに。
株式市場も、よく辛抱したもんだ。
外為市場もね。
企業の「決算発表延期」なら、株価暴落ストップ安だけれど。
オバマ大統領そしてガイトナー財務長官への期待感、並々ならぬものだったか。
だから、期待の裏返し。
失望売り。
☆ 包括的金融安定化策。
昨秋ポールソン前財務長官がまとめた8千億ドル規模の金融安定化法案。
当初は不良資産買取を目指したが、不良資産価格の算定が困難で挫折。
手法を、公的資金注入へとシフトした。
対象も、金融機関から自動車など一般製造業へと拡大している。
ブッシュ政権下ポールソン財務長官の「金融安定化法」。
その「なし崩し」の実施経緯も含め現況、金融安定化の実効力が認められない。
そこでオバマ政権は新しい「包括的金融安定化策」の策定を急いでいた。
《「包括的金融安定化策」の内容》
以下の4本柱。
@ 新たな資本注入。
A 不良資産買取。
B 貸し渋り対策。
C 住宅ローン対策。
@金融機関に包括的資産査定を実施、必要と認定された金融機関のみ資本注入。
加えて、「貸し出し(企業・個人への融資)の増加」を資本注入の条件にする。
A財務省・米連邦準備理事会(FRB)・米連邦預金保険公社(FDIC)。
上記政府機関3者と民間(機関)投資家が共同「不良資産買取」ファンド設立。
不良資産買取価格は、民間(機関)投資家の判断に委ねる。
出資金の一部を政府機関3者が負担、また低利での支援融資を実行。
最大資金投入規模1兆ドル。
BFRBの新融資制度を活用。自動車ローン担保証券等購入の投資家向け融資。
機能停止状態にある「証券化商品市場」活性化を図る。
最大融資規模1兆ドル。
C住宅差押さえ、住宅資産価値低下、など住宅危機克服のための包括的対処。
住宅ローン返済負担軽減と住宅ローン金利引下げが柱。
《「包括的金融安定化策」の問題点》
@闇雲でなく「資産査定」を実施の上「包括的な」資本注入を行うことは必要。
国際通貨基金(IMF)が1月末提言した内容と符号する。
すなわち、「厳格な資産査定」を前提とした金融機関以下の3グループ分け。
1)自立存続「銀行」・2)要公的支援「銀行」・3)破綻不可避「銀行」。
日本でも横並びの資本注入が奏功せず、厳格な資産査定を導入した。
しかし、資産査定の基準策定と実施に時間を要する。
さらに、公的管理色が強まり金融機関の反発も強いだろう。
だが今次の「包括的金融安定化策」で述べられた「資本注入」。
最大の問題点は、その財政支出規模が全く不明なことである。
A公的資金で不良資産を買取り金融機関から分離するバッドバンク構想ならず。
推計で5.7兆ドルの米銀保有不良資産。
「官民共同ファンド」が買取る最大規模が1兆ドルで不良資産に対して少ない。
また「民」の投資家が買取価格を決めるのだから、仕組みが複雑化するだろう。
公的資金注入同様、低査定なら金融機関が尻込み、高いと納税者の反発を招く。
B最大1兆ドルもの融資が回収出来る保証はない。
かなりの膨張した額をFRBが不良資産として抱え込む危険が少なくない。
C具体的な手段と支出枠組みが何も示されず、後回しされた。
2009年2月10日発表「包括的金融安定化策」の問題点。
つまりは、「資金規模」と「資金投入手続き」の問題に集約される。
「資金規模」。
本質的に「包括的な」ものにするには、将来の損失も含む規模が必要だ。
それは少なくとも4兆ドル規模以上となることを指摘する専門家もいる。
資金規模が「包括的」でないなら。
昨秋2008年10月3日ブッシュ政権下で成立の金融安定化法の域を出ない。
つまり。
多額の資金を投じても金融安定どころか、金融状況一段の悪化すら懸念される。
「資金規模」と同様「透明な手続き」。
強力なリーダーシップの下、段取りを決めずば、肝心の所が曖昧に残るだけだ。
逆に強大な指導力で納税者=国民と金融機関を動かすことが出来れば危機克服。
分かっているけど、それが出来ない。
本当に莫大な支出や損失を認めるには、勇気が要るから。
「損切り」が一番難しいのと同じ理屈です。
「包括的金融安定化策」に先立ち「景気対策法案」成立を為したオバマ大統領。
素晴らしい指導力です。
しかし、「景気対策法案」。
下院案に賛成した共和党議員はいなかった。
上院案で3名のみ。
商務長官に指名されていた共和党議員は「政策の不一致」を理由に辞退。
大統領の目指す「超党派」連合構想は早くも挫折。
人気の民主党政権に抗する共和党の構図が鮮明になるばかりだ。
2009年現在の世界金融経済危機。
いかに「包括的(必要充分)」な資金規模で。
「適切な(正しい方向と透明な手続きの)」手段を用い早く迅速に対処するか。
今回成立の「景気対策法案」財政規模。
オバマ大統領、というより「政党政治」の限界を象徴している。
中途半端な財政支出規模にならざるを得ない。
意味のない「一時金減税」を実施せざるを得ない。
しかし、オバマ大統領。
「早く迅速な」法案成立をなし遂げることが出来た。
それだけでも、大きい。
オバマ大統領。
世界金融経済危機への最終兵器。
しかし、政治の限界を超えることは叶わないだろう。
日本の金融機関が不良債権処理を終えるのに10年を要した。
施策が後手に回りスピードを欠いたから。
そこから学んだ、米政策当局。
危機からの回復に10年はかからないだろう。
しかし、5年前後を必要とする可能性は残る。
さて日本の住宅ローン金利を考えると。
アメリカ景気に左右される日銀政策金利と十年物国債。
5年をメドに考えても、当初固定金利1.70%は充分低い水準。
みずほ銀行「借換え」優遇「当初10年固定金利」1.70%です。
私、頭では分かっています。
2009年2月適用住宅ローン金利。
10年固定で1.70%がいかに有得ないほど低いか。
しかし、私。
住宅ローン「全期間マイナス1.4%優遇変動金利」を選ぶ。
何故か。
1.70%にすると、毎月返済額が増えるからです。
現在、横浜銀行「全期間マイナス1.2%優遇金利」で1.675%。
1.70%でも、若干毎月返済額がアップ。
その僅かな上昇額でも我が家の「サブプライム」な家計には耐えられない。
思い返せば、売却損を負ってまでマンションを買換え5000万円住宅ローン。
それも、横浜銀行住宅ローンの金利優遇のおかげで毎月返済額が減少したから。
始めから「サブプライム」な状況の住宅ローン設計だった訳ですよ。
現在の経済状況のままで住宅ローン金利が上がるなら、車を手放し、そして。
マンションを手放して(賃貸で人様に貸して)、その家賃収入でローン返済。
配偶者の実家に寄せて貰って、です。
肩身の狭いことよ。
反面教師に過ぎないのか、住宅ローンマスター。
でも本音ではね。
住友信託銀行の住宅ローン「借換え」審査が通過すれば。
「全期間マイナス1.4%金利優遇」で住宅ローン金利3月適用1.075%。
日銀政策金利が2007年水準、つまり現在から0.4%上昇したとしても。
住宅ローン金利1.475%。
充分緩和的な水準、1.70%と比較してもね。
半分本気で、今後10年の平均住宅ローン金利。
「マイナス1.4%金利優遇」で1.70%を下回るだろうと考えるのですよ。
どう出るか。
誰にも分からないでしょうがね。
《 本日のポイント 》
☆ 米「包括的金融安定化策」ポイントは財政規模が充分「包括的」か否か。
☆ 上記「安定化策」の「財政規模」と「手続き」が不明な点多く前途多難。
☆ オバマ大統領「景気対策法案」成立の早さ見事でも「安定化策」は難しい。
☆ オバマ民主党政権、共和党との「超党派」協働も暗雲立ちこめる状況。
☆ アメリカ経済回復、10年と言わずとも5年前後を要する可能性も有りか。
☆ 本邦住宅ローン「当初10年固定」でも優遇金利1.70%は白眉。
☆ 住宅ローン金利「変動優遇」でも1.075%水準なら得となる可能性も。
米オバマ大統領が成立させた「景気対策法案」。
72兆円規模です。
米政府は実質国内総生産(GDP)3%以上の押上げ効果を見込みますが。
民間機関の試算では2009年度実質成長率。
「景気対策効果」を入れても、マイナス1.9%に沈むそうです。
そもそも、オバマ「景気対策案」。
2010年9月末までの支出見通しが、それでも74%。
今年2009年9月末までの執行予定は、僅か全体の23%。
これが、施策の現実。
成立の後が時間がかかる。
その間にも、経済危機の局面も変化するのだが。
全てを勘案すると、残念ながら。
アメリカ発の世界金融経済危機。
オバマ大統領の実力をもってしても、前途は未知数。
一波乱も有り得る、今後の経済状況でしょう。
それではまた、お会いしましょう。